いろいろ書きます

THE職人

2008年04月16日 | いろいろ書きます


以前、手に入れた古いオメガのシーマスター
しばらくは動いていたが、すぐに壊れてしまった。


                   「THE職人」

以前、手に入れた古いオメガのシーマスター
しばらくは動いていたが、すぐに壊れてしまった。

友人の紹介で、時計屋さんへ修理に出した。

「あのおやっさんは信頼出来る。バリバリの職人さんで
面白いよ」と聞いていた。

僕の父親くらい世代の方だろうか、いかにも職人さんと呼ぶに
相応しい風貌のおやっさんは僕の目の前で時計をあっという間に
バラバラと分解してみせた。
片目には大きな虫眼鏡のようなルーペをつけて。

狭い店内で後から来たその筋の方を平気で待たせている(笑)

「これは酷いな。。。」
直すなら、中味をそっくり交換するほどの作業になると。
安くは直らないと言われた。

僕は時計音痴ですがその「姿」やヤレ具合がとても気に入っていたので
「覚悟してましたのでお願いします」とOHを依頼した。
決して高価な時計じゃないけれど、一度手に入れた時計だから
生き返って欲しいと思った。

しばらくするとOHを終え時計は蘇った。
OH代金は僕の想像を遥かに超えていたが(笑)
仕事の内容を聞き全くもって納得してお支払いした。

それから2年間はノントラブルだったが最近、動きはするが時間が
遅れるようになってしまった。おそらく僕の扱い方、仕様頻度や何度か
軽くぶつけたりしているのも原因だろうと思っていた。

しばらく別の時計でお茶を濁していたがどうもしっくり来ない。
そこで、オメガを持って久しぶりにおやっさんの店を訪ねた。

また以前のようにバラバラと分解し点検をしている。
機械にかけ時計の音を聞いたりもしている。

「しばらく預かるから、○日頃電話してよ」と言われ
僕は時計を預けて帰りました。

そして今日、電話をすると「出来上がっているからどうぞ」と言われた。
僕は「して・・・修理代はおいくらですか?」と聞こうと思ったが・・・
「判りました、取りに伺います」と電話を切った。

店に行くと、沢山ある修理上がりの中から僕の時計を取り出し
またいつものように分解し、僕はチンプンカンプンだが何が原因で
どこをどうしてと説明をして下さった。

時刻を合わせ微調整しているようだった。
職人歴うん十年であろう店主の動きは見ていて気持ちいい。

ふと横を見ると僕の修理依頼の伝票が置いてあるのが目に入る。
その伝票に「\0」と赤ペンで書いてあるのが見えた。

ほっとしたような本当にいいのか?とも思った。
清掃もしてくれたようだった。

「これはいい時計だから大事に使いなさいよ」とおやっさんは僕に
時計を渡してくれた。

伝票をチラ見(笑)していたが「あの・・・料金は?・・」と聞くと。

「また使ってみて何かあったらもっといで」と店主

・・・・・

「ありがとうございます」と僕

奥から仕事を受け継ぐであろう息子さんが出てきて
3人でしばらく談笑

2年前来店した時は、何だかおやっさんに怒鳴られてばかりいて
見ている僕も辛かったが、今日の彼は自信に満ちて目が輝いていた。
おやっさんもこの2年で彼を一歩認めたところがあったのだろう
そんな彼をニコニコ見ている。

息子さんが「これはカッコイイですね、僕も欲しいなぁ」と言って下さった。
おやっさんは本棚から時計の本を出し
「このモデルはこうだから、これはこうだなぁ~」と話が盛り上がる。
僕はあまり判らないので「へぇ~、ほぉ~」と相槌を打つだけですが。

こうなると車も時計も全く同じでスキモノ同士の時間である。

話は尽きなかつたが妻が車で待っているのを思い出し(笑)
「では、ありがとうございました、またお願いします」と店を出た。

ビルの谷間にひっそりと佇む古い小さな時計屋さん。
おやっさんの手で、どれだけ多くの時計が今一度、時を刻み始めだろう。

こういうお店。。。

いつまでもあり続けて欲しいと思った。



昔から本物に触れ本物を知り尽くし適正な作業が出来る職人さんは
どの世界でも(どの業種でも)みなさん高齢化している。
うちの内装の張替えをして下さる方も「あと何年かなぁ。。」と言われている。
弟子はいない。

僕が知っているだけでも古くから整備やレストアしていた職人さんや
ショップも随分少なくなった。

拘りの車種構成の魅力あるショップも少なくなった。
年齢的なリタイアもあるし商売にならず、閉店してしまった店も多い。
(KIもいつまでもあるかどうか。。。汗)

この時計屋さんのように次の世代が育っている店はいいが
実際は、引退したら終りという職人さんやショップが多いのも事実。

受け継がれるモノもあるだろうが現役でその店がある時に
何かを通じ(車でも時計でも)お付き合い出来るのも永遠ではない。

また、こと旧車に限らせてもらえば、数年前から比べると価格も
高くなったし部品供給も難しくなりつつある車種も多い。
何よりもキャブ車が気持ちよく走れる地球環境がこの先、永遠に続くとも思えない。

若い世代の多くは旧車に興味が無い。
ある意味、僕らおっさん世代が、古い車を楽しめる最後の世代かもしれませんね。

                        

                                   しぶちん




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